はじめに
経理は仕組み作りが9割だ。仕組みづくりをどうするかでほとんどのことが決まる。簿記や会計の知識、どんな処理ができるか?に目が行きがちだが、仕組みづくりをどうやるか?効率的で無駄のない仕組みが作れるか?はそれ以上に大事だ。そんな経理の仕組みづくりについての話。
仕組みづくりが大事な理由
仕組み作りが大事な理由について、経理の仕事は9割が仕組みに影響される。理由は9割がルーチンワークで、ルーチンワークは作られた仕組みを回す作業である、ということは仕事の9割が仕組みに影響を受ける。よって、経理は仕組み作りが9割ということだ。
9割が仕組みの上に成り立っているため、その仕組をどう作るかによって業務の効率や精度が大きく変わる。個人的には一番重要だとすら思っている。
ちなみに、ルーチンワーク外のイレギュラーの業務は1割以下で、それ以上あれば異常値と言える。明確な理由や1時的なものであればいいが、そうでなければ経理組織としては危ない状況だ。見方によっては破綻している。
仕組みの内容
では、その経理の仕組みとは何なのか?経理業務の大まかな流れとしては
1,情報収集:現場の一次情報を集める
↓
2,編集:仕訳の形に編集
↓
3,入力:会計システムに入力
となっており、毎月このフローを回していく。
ルーチンワークなため、基本的にマニュアルがあり業務が定型化されており、人が行う作業も含めて全体が仕組み化されている。各種現場のシステム、情報収集の方法・フロー、個別のデータ編集の方法、会計システムに入力する際のルール等、それら全てが「経理の仕組み」である。
1,情報収集
一次情報がどこで・どのように・何に・誰が入力し、どの様にデータが流れていくのか?また経理としては、どこにその必要な情報があり、どうやって取得するのか?という全体が情報収集である。この流れをどうするのか?システムを導入し、そこから出力できるようにするのか?請求書はどこに届け、誰が情報をデータ化するのか?等を考える必要がある。
2,編集
収集したデータを編集して仕訳の形にすること。手作業で行う場合もあれば、システム化されていればこのステップは飛ばせる場合もある。
3,入力
最後に、会計システムに入力する段階。手作業で入力したり、csvである程度まとめてアップロードしたり、自動連携したものを承認したりする。この部分も、自動連携を行うことで業務が効率化される部分である。
仕組み作りのポイント
そんな経理の仕組み作りについて、ポイントになる点は
1,業務フロー
2,システム
3,会計
4,フォルダ
5,マニュアル
6,Excel
である。
1,業務フロー
一番重要なのは、どういう流れになっているかであり、それが業務フローだ。そもそも業務フローがよくわかっていない場合は先ず書き出してみる必要がある。その際には以下の2~6の項目がどうなっているかも含めて書き出す。誰が、いつ、何を使って、どの様に処理するものなのか?元データはどこからもってきて、どのシステムを使って行うのか?等について現状を書き出す。書き出さない状態で改善しようと思うと、予想していなかった所に影響が出てより大変なことになる。
2,システム
フローがどうなっているかわかった上で、使えるシステムがあればより効率的になる。社内の既存のシステムはもちろんのこと、現在は月額制や従量課金制で初期投資がかからない外部システムもたくさんある。量が少ないのでとりあえずExcelで処理が、取引量が増えていきExcelでは限界を迎えることがある。Excel処理で量が増えていく可能性が高いものは、前もって世の中のシステムに置き換えれないかを考えておくといい。
また、新しいシステムがどんどん開発され、料金もどんどん安くなっているので、今まで手作業でやっており、数年前に検討したが料金や昨日で断念したものも実はシステム化を低コストで実現できるものは結構ある。
システム化することでのメリットは
①作業が自動化
②凡ミス防止
③保守が不要
④社内人材が不要
と、作業の自動化以外にもメリットはある。
①作業が自動化
作業の自動化はわかりやすいメリットだ。データをもってきて、Excelで編集して、会計システムに入れてと手作業でやっていたものが、現場で入力されると自動で会計システムまで連動されるというものもある。単純に人の作業が減るため、かかる工数、人が行うことによる間違い、間違い防止のための確認作業が減る。
②凡ミス防止
手作業で編集をしていると、自由度が高い分ビックリするような凡ミスも起こりがち。数字の桁を間違えたり、関数を消してしまったり、保存を忘れたり等だ。これらがシステム化することでかなり防止できる。入力の仕方や方法が決まっており、おかしな入力はアラートを出してくれ、自動で保存してくれるためだ。特に、システム内のルールを勝手に変えることはできないというのが大きい、システム内のルールはExcelで言うところの関数にあたる。Excelだと関数はワンクリックで簡単に消えたりズレたりしてしまう。複雑なExcelなら関数1つで全てが動かなくなることも。
③保守が不要
長い目で見ると大きなポイント。ExcelやVBAでも複雑な仕組みを作ることで目の前の処理は大体自動化できる。しかし、永遠に同じ処理だけであることは少なく、処理の方法も変わることがある。その際にExcelやVBAだと補修が必要になってくるが、システムの場合だと勝手にアップグレードしてくれる。また、何かエラーがあった場合なども同様だ。
④社内人材が不要
こちらも長い目で見ると重要な点。1次的にはExcelやVBAでも事足りることが多いが、ExcelやVBAが高次元で使える人が常にいるわけではない。特にVBAはそうだ。経理におけるVBAは採用の絶対条件ではないため、あまり使える人がいない。VBAも使えれば加点評価にはなるが、それができるから採用されるということはなく、あくまでもプラスαの要素だ。
VBAで作った仕組みが、作った担当者が転職して誰も使えなくなり、ブラックボックス化するというのはよくあることだ。そんな時にエラーが出たら保守が必要になるが、分かる人がいないのでどうしようもない。そんなことがシステム化していると起こらないのは長期のリスク管理として大きな意味がある。
また、社内に作った人がいたとしても、だいぶ昔で内容を忘れていたり、他の仕事が忙しくて対応できなかったりということもある。そのような自体も事前に防ぎ、考える必要が無くなる。
3,会計
経理の仕組み作り特有のポイント。どれだけ良い仕組みを作れたとしても、会計ルールの視点が抜けていると全く使い物にならない。そのため、シンプルで効率的な仕組みを模索しつつも、会計的な問題が無いかも同時に考えなければならない。これが案外難しく、ややこしいポイント。
実際に仕組みを作っていく中で「あっちを立てればこっちが立たず、こっちを立てればあっちが立たず」というシーソーの用な関係であるこを実感することがある。特に効率化と会計ルールはそうなることが多い。
4,フォルダ
フォルダ管理も大事な仕組みの一部だ。データを管理するフォルダの構成やルールをどうするか?ファイル名の付け方にどう法則性を持たせるか?等だ。物凄く基礎的な部分だが、基礎だからこそ全体への影響が大きい。この基礎的で地味な細かい部分までこだわって行うことで、全体の無駄な作業を大きく減らせる。データを探すという作業は点で見れば大したことは無いが、経理はこの作業を毎日100回以上行う。毎日10個のデータで、探すのに3分かかっていれば、毎日30分のロスだ。見えにくい部分だが、業務の影響は実は大きい。
同様に紙の書類についても同じことが言える。経理なりたての際、棚から書類捜索を依頼されることが結構あったのだが、毎回2時間ぐらいかかっていた。棚が全く整理されておらず、どこにあるか全く分からず存在するかしないかを知るためには、全ての棚を見るしかなかった。せめて、分野別にでもわけられていれば数分で済む業務だ。
データ、書類の整理整頓は誰もやりたがらず、経理知識が増えるわけでもないので軽視されがちだがこれも重要な経理の仕事の一部だと考えている。
5,マニュアル
意外と大事なのがマニュアルだ。これもデータ・書類の整理整頓と同じく軽視されがちな部分。作る作らない、どういう作り方にするか?などが各業務担当者の最良に暗黙で委ねられていたりするが、引き継ぎの際に大体ここでつまずく。マニュアルを作らないは絶対NG
6,Excel
個別のExcel作業も仕組みの一部であると考える。システム化できるものはどんどんシステムの中で運用していくが、100%システム化というのは経理においては不可能だ。少ないにこしたことは無いが、どうしても発生してしまう。その際にExcelの中身がどのような作りになっているか?本人にしかわからない、何をやってるか訳の分からないものになっていないか?も重要なポイント。特に、マクロやVBAは人がいなくなると大変でブラックボックス化しやすい。
まとめ
経理における仕組みづくりについて話した。私は今まで仕組みづくりに重きを置いて経理をしてきた。上記のことに注意して、どんどん効率化していくことで業務量が半分、1/3、1/4とどんどん減っていった。ずっと同じ方法でシステムも変えずに、マニュアルもフロー図も無く行っている業務があれば、それは改善のチャンスであり、やってみると結構工数が減る。
やり方を同じままで、処理のスピードを頑張って上げるのはどうしても限界がある。これを最後まで読んでくれた方にもし処理を重視している人がいれば、処理の努力から仕組み作りの努力に努力の方向性を変えてもらえれば幸いです。