経理と経理事務の違い

目次

はじめに

「経理」と「経理事務」。似てるようで違うこの2つ。何が一緒で何が違うのか?経理経験者ならなんとなく理解しているが、なんとなくしか理解してないこの件についてちょっと整理して考えてみる。

それぞれの仕事

2つの仕事はそれぞれどういったものなのか?個別に具体的に整理してみる。その結果を比較すれば何が一緒で何が違うかがわかるはず。

経理

先ずは経理について。経理の仕事は「会社のお金の動きを記録・報告する」ことだ。いろいろあるけどメインはこれ。社内の各部署が事業運営をするに当たっていろいろな活動をする。

営業ならお客様に訪問する際の交通費がかかる、リモートでもZOOMの月額料金がかかる。その後受注をすれば契約書・請求書を発行して、納品次第その内容を売上として帳簿に記録する。そして、帳簿に記録されたデータの集合体をBS・PLとしてまとめ、経営者や株主、税務署などに報告する。

これが基本的な経理の仕事。それに付随していろいろな業務があって、経理外の人が関わる部分としては経費精算が一番大きいところ。

経理事務

経理事務は経理の中でもに処理関する部分に限定した役割。社員が交通費を使えば経費精算が発生する、その際に申請を受け付けて処理をするのが経理事務の役割。

経理の仕事は記録・報告だが、報告の部分に関わることはほとんどない。記録の部分がメインだが、記録の手前には確認と処理がある。現在の会計システムは処理を行えば自動で記録がされるものがほとんどであるため、処理と記録には実務上の差はあまり無いかもしれない。

経費精算システムで経費精算の申請を処理すれば、社員への精算データ作成と同時に仕訳データも生成され自動で反映されるという流れ。

また、経理外の一般事務的な業務も範囲の一部。書類整理や切手・印紙の管理、電話対応等がそれにあたる。会社にもよるが、経理事務として募集をしている場合は一般事務的な業務も求められることがほとんどで、経理業務だけではないのが特徴。

全体のイメージとしては「経理の基礎的な処理+一般事務」という感じ。

違いについて

上記を整理すると
経理:経理全般
経理事務:経理の事務処理+一般事務

となる。

違いとしていは
『経理事務がやらない経理業務』
 ①仕組みづくり
 ②会計論点対応

『経理がやらない経理事務業務』
 ③一般事務
である。

①仕組みづくり

経理事務が仕組みづくりをお願いされることは基本ない。マニュアルがある処理を行うのが基本であるため、何かを作るということは基本的に想定されていない。

ただし、全く何も無いわけではなく既存の仕組みの改善・更新ぐらいはお願いされることが多々ある。例えば経費精算の項目が1つ増えたので、マスター・申請フォーム・マニュアル・の対象部分を更新してくださいといったようなものだ。

経理事務の範囲を超える仕組みづくりとしては、経費精算システムの載せ替えや、業務フロー全体の再設計等を指す。流石にこのレベルを依頼されることはなく、これは経理事務の業務範囲を確実に超えている。

②会計論点対応

要はややこしい会計の話。監査や税務でよく「論点」という言葉が出てくる。会計上のルールや他社事例を元に、発生した事象の会計処理をどうすべきか?について考え議論することである。

経理実務は、単純な◯✕問題ではないことが結構ある。単純にルールに当てはめれば表面上は✕だが、会社としては何と◯としたい。そういった場合にそのまま何もしなければ✕のままなので、ロジックを整理して条件をつけたり、前提を変えたりすることで何とか◯にもっていくということがある。

他にはAとBのどちらを選択するか?というパターンもあり、その場合にどちらが自社にとって最適な選択なのか?Cは無いのか?短期・長期でのメリット・デメリット等を整理して選択するということもある。

こういう部分は経理事務の範囲を超えている部分になる。

③一般事務

これについては、社内に経理事務として雇われた人がいなければ、経理のメンバーがやることは普通にある。経理がやらないと言ったが、それは経理事務専任がいる場合に限る。バックオフィス全般に言えることだが、専任の人がいない役割は結構あって、いなければ代わりに誰かがやる。

1人雇うほどではないが、業務としては発生しているということはとても多い。ある程度業務量が増えてきて、回らなくなってきたら専任の人が増えたりする。場合によっては破綻するまで増えないことも多い。

分ける理由

基本的には同じような仕事が、何故細かく分けて呼ばれているのか?理由についても考えてみる。

恐らく、担ってほしい業務と、それぞれの適正・思考が大きく分かれるからだと思われる。

経理」と言う場合、会社としては個人に、全体についてどんどん出来ることを増やしてスキルアップしてほしく、その前提で採用を行う。守備範囲を増やすのはもちろん、課長・部長とマネジメントもできるようになるか、より難しい論点にも対応できるプロフェッショナルになるかを求められる。

しかし、経理が好きな人には毎日・毎月決まった処理を安定的にこなしていいたいという人も結構いて、その場合会社の要望に答えることはなく、本人にとってもストレスでしかなく、ミスマッチが起こる。

そこで処理部分に特化した業務を「経理事務」として解りやすく切り出すことで、ミスマッチが起こらなくなる。毎日決まった処理をしていたい人がそれ以外をしなくて済むためである。

業務スケジュールとやることが決まっているため、仕事が安定しており、責任やイレギュラーからくるストレスは比較的少なく、残業も少ないためそういった志向・適正の方が結構いる。

個人の処理には限界があるため、給料は上がりづらく上限があるが、一般事務よりかは簿記という専門性があるため普通の事務職よりは給料が高い。

さいごに

経理と経理事務の違いについて整理した。細かい違いに見えるが実は結構違う。採用の際にわざわざ経理事務という場合は処理が正確で早い人を探している時。経理の場合は全体的に対応してくれる人という違いがある。

実際に経験したからこそ書ける内側の話を書いてみた。

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