はじめに
ある時気づいた。「経理の工数は会社の成長に比例しないんだ」ということに。ベンチャーで働いてる時に、何でこんなにしんどいのか?と考えた際にふと思いついた。ベンチャー等、新しいことにチャレンジしている会社の経理なら共感してもらえるポイントだと思う。
経理の工数はいつ増えるのか?成長でなければ何なのか?この点について考えたことを話していく。
理由
会社の成長に比例しないというのは、言い換えると会社の売上に比例しないということだ。もっと言えば売上金額の話になる。
売上金額が増えても経理の工数が変わらないというのはどういうことか?経理の処理は毎日、毎月同じ処理が行われる。その際の中身の数字が変わったところで処理の工数は変わらない、1処理は1処理で工数は同じだからだ。
細かく言うと、受注数が増えて処理の個数(トランザクション数)が変わるとその分変わるが、受注数が同じで金額が増えただけなら変わらない。そして、受注数が増えれば処理は増えるがそれは1部の業務の1部分だけなので、全体への影響は実はそこまで無い。
増加要因
では逆に経理の工数を増加させる項目は何なのか?それは
1,会社数
2,事業数
3,商材数
4,トランザクション数
5,内部取引の複雑性
6,製造の有無
である。これらが大きな要因だ。そしてこれらは売上が変わらなくても変わるポイントである。
1,会社数
一番大きいのはこれだ。売上の金額に関わらず、会社が1社増えれば工数はシンプルに倍になる。売上も原価も販管費も別で処理して記録しなければならないからだ。グループ会社とはいえ、法人が別なら帳簿を分けないといけない。そのため、工数は1社分丸々増える。
例えば「売上10億✕1社」と「売上5億✕2社」だと、売上額は一緒だが経理の工数は2倍以上になる。
2~3,事業数・商材数
これも細かく分けて見る場合、工数がどんどん増える。事業数・商材数がおおければ、1つの費用を複数に分けるという作業が発生する。元々1つのものを複数に分けてから処理するので、結構工数が増える。
例えば、広告宣伝費。請求書上で事業ごとには別れていても、商材別にまでは別れていなかったりする。また、事業ごとにわかれていたとしても、事業の数だけ処理の回数は増える。1事業なら1回の処理で済むものが2回、3回と増える。
4,トランザクション数
例えば入金確認、入金の回数が増えればその分処理の回数は増える。なので、この数が増えればシンプルに工数は増える。現在はシステム化が進んでいる部分ではあるが、システム化していても影響は大きめのポイント。
売上が同じ1000万だとしても、1000万✕1受注と1万✕1000受注では処理の工数が全く変わってくる。なので、1受注あたりの金額が小さな事業ほどこの影響は大きい。
5,内部取引の複雑性
これはグループ会社がある企業限定の話だが、グループ内でのやりとりが多く複雑な会社程経理の工数は増える。グループ内でのやり取りは1つ1つのやり取りを経理側で認識しなければならず、いちいちそれを探し出して記録しておかなければいけない。これが結構手間で、意外と工数がかかる。
6,製造有無
自社で製造を行う場合、経理の工数は急激に増える。仕入れた在庫の管理、製造時の原価計算、売上計上のための入出荷管理など。実際の運営は工場で行っていたとしても、影響範囲が大きく複雑で何かあれば経理で対応しなければいけない。製造に関わる経理の工数というのは結構でかい。
例えば、自社開発のアプリを提供する会社なら、在庫・固定資産・原価計算・入出荷管理はほとんど全て不要で、人件費の工賃と納品時の納品書さえあればいい。しかし製造を自社で行う場合、在庫・固定資産・原価計算・入出荷管理は全て行わなければならず、このそれぞれが結構でかい。
もしベンチャー企業で新しく工場を保つ場合、工場も経理も人が足りない中で仕組みの構築から行い、運用する人も兼任で工数確保ができず地獄を見る。
影響
経理の工数が売上に比例しないからなんだ?という話だが、実はこれが経理にがしんどい原因になっている。
投資されない
会社は売上が上がっていれば投資もしやすいが、売上が上がっていない時に投資をしようとは中々思わない。しかし、売上に関係無く経理の工数は増える。工数は増えるが、売上は増えていないので増員はされずシステム投資もなかなかされない。結果、無理くり回すために特殊な属人化したExcelが誕生する。
新しいことにチャレンジしている会社の経理は何度も経験したことではないだろうか?無理やりなんとか回して、もう無理なところまで言って、外部から言われてやっと変わる。